360度パノラマ

著者: 新井美和
発行: 2015年4月14日10:33:52
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ベトナムのお正月

     もうじき、ベトナム人にとって一番楽しみな時期がやってくる。

     テト(Tet)という新年、お正月だ。

     伝統行事に関しては旧暦に従うこの国では、2015年の元旦は2月19日。その前日の大晦日から3が日にかけての4日間またはその前後1週間位は、会社も商店もお休みとなり、地方出身者は地元へ戻り、外国に暮らしているベトナム人もベトナムへ帰ってくる。テトは、欧米でのクリスマスのように、一昔の日本のお正月のように、この時だけはふだん離れて暮らす家族も仕事や勉強の手を休めて集まり、必ず家族と地元で過ごす、とても大切な行事だ。

ベトナムのお正月 

ベトナムのお正月 

     クリスマスイルミネーションのように、夜になると各通りのお正月の飾りつけが、競い合うようにライトアップされる。

     テトの間の街は、本当にがらんとする。市場はもちろん路上カフェも天秤竿の物売りもなく、普段道を埋め尽くすバイクの音さえまばら。国中が静かなお正月モード、別世界モードになる。だから、ホテルやレストランで働く人たちなど、運悪くテトに休暇をもらえないベトナム人たちのがっかり感は、日本のお正月のそれとは比較にならない。

年末になるとカレンダーも街のあちこちで売られる。

     年末になるとカレンダーも街のあちこちで売られる。

     さて、このお正月に何をするのか。大晦日までに家族で美味しいものを作り、ご先祖様にお供えし、元旦に一緒に食べる。2日めからは母方の親戚や親しい友人への年始あいさつ回り、そして初もうでだ。

かまどの神様を送迎する時に飾る、紙製の帽子と靴を売る天秤屋さんも年末の風物詩。

     かまどの神様を送迎する時に飾る、紙製の帽子と靴を売る天秤屋さんも年末の風物詩。

子供へのプレゼントにの風船売りも増えて、街が可愛くなる。

     かまどの神様を送迎する時に飾る、紙製の帽子と靴を売る天秤屋さんも年末の風物詩。

花と爆竹の飾りもお正月用。

     花と爆竹の飾りもお正月用。

     大晦日の1週間前には、“かまどの神様”という家の守り神を送り迎える行事があり、それがお正月行事の始まりになる。その頃には、お歳暮やお正月のお飾り、食品の買い出しもピークを迎え、どこもすごい人出になる。

この時期だけお歳暮ショップがポコポコ出てきて路上に店を構える。

この時期だけお歳暮ショップがポコポコ出てきて路上に店を構える。

     ベトナムには、日本と同じようなお歳暮の習慣があって、年末になると普段世話になっている人や仕事上の関係者などに感謝の意を込めて、籠いっぱいの食品(コーヒーや飲み物、菓子やお酒など)を贈る。この時期だけお歳暮ショップがポコポコ出てきて路上に店を構える。

     おせち料理は、一家の女性たちの腕の見せ所。メインは、バインチュンという保存食で、豚肉を練ってハムのようにしたものを緑豆粉で包み、それをさらにもち米で包んだ巨大な肉入りちまきのようなものを、ラーゾンという植物の大きな葉で包んで、蒸すかゆでるかしたもの。お餅のように保存がきくので、少なくとも3が日の間はこれを食べ続ける。もちろん他にも鶏の丸焼きや豚肉の煮込み、スープや野菜の酢の物、揚げ春巻きなどのごちそうも並ぶ。

左はバインチュン。右は5種の果物をお供えしている祭壇。 手前は“仏手柑”という縁起の良い果物。

     左はバインチュン。右は5種の果物をお供えしている祭壇。
     手前は“仏手柑”という縁起の良い果物。

桃と金柑の木を売る店が街中に。買ったら、当然バイクで運びます!

     桃と金柑の木を売る店が街中に。買ったら、当然バイクで運びます!

     そして、何より大切なのは家の神棚というかご先祖様を祀った祠の装飾とお供え。普段から先祖をきちんと敬うベトナム人だが、お正月は特に念入りにお供えを用意する。お正月の1週間前に見送った“かまどの神様”が戻って来る大晦日までの間に大掃除をして家を清める。

     それから厄除けの木と信じられている桃の花(南部には桃の木はないのでホアマイという黄色い花)と、子孫繁栄の象徴と信じられている金柑の木を飾り、魔よけの竹やさとうきびの竿を家の前に置くこともある。祭壇には花や五行思想の5にちなんだ、5種類の果物が供えられて、大晦日から3が日が終わるまで、ずっと線香が焚かれる。

 お供えと飾りの整った祭壇。

     お供えと飾りの整った祭壇。

ハノイでは、ドンホー村の伝統版画も縁起が良いとして飾る家が多い。

     ハノイでは、ドンホー村の伝統版画も縁起が良いとして飾る家が多い。
     ナッツや砂糖漬けの果物は来客用にたくさん用意しておく。

新年は、家の祭壇だけでなくお寺にもお参りに行き、祈る祈る!

     新年は、家の祭壇だけでなくお寺にもお参りに行き、祈る祈る!
     初もうでのピークは旧暦の1月15日、つまり新年最初の満月の日だ。霊験あらたかといわれるお寺は、押すな押すなの初もうで状態に。

縁起の良い赤い袋にお年玉を入れる。ベトナムでは子供だけでなくお年寄りにもあげるのは、微笑ましい。

     縁起の良い赤い袋にお年玉を入れる。ベトナムでは子供だけでなくお年寄りにもあげるのは、微笑ましい。

     今年のベトナムのお正月は、新暦2月18日の大晦日から2月22日(日曜)まで。

     桃や金柑で彩られるエネルギッシュな年末の街の風景、元旦の日の時間が止まったかのような静けさが、一昔前の日本でもお正月は、こうして指折り数えて迎える日で、家族と向き合い、心が静かになる、大切な時間の節目だった、ということを思い出させてくれる。

カテゴリー外, Vietnam

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